「上町まるものがたり」の店頭に作庭された「一坪苔庭」は、日々通りゆく人々の目を楽しませてくれています。
四季折々に顔を覗かせる山野草や樹木、苔、石など立体的に作庭され、小さな里山さながらの風景を生み出すこの新しい提案は、フロリガーデナーの瀬沼泉さんの設計と、株式会社イケガミさんの独自の技術「アクアソイル工法」で作られました。
「アクアソイル」とは?
株式会社イケガミの「アクアソイル工法」の人工地盤は、軽くて、保水力、排水力の高い真珠岩パーライトを使っており、立体的に形成が可能で、樹木が育ちにくい表層の薄い場所でも、細くて健全な根を張れる環境を長期間保つことができます。この都市部の浅い表層は屋久島の地層の特徴にも似ていて、そこからヒントを得た独自の技術とノウハウは、都市部の植栽や屋上緑化にも生かされています。
一坪苔庭メイキング
店頭のフロアはタイル貼りで土はありません。この上にどうやって苔庭が?と思っていると、木枠の板の上にフェルトが敷かれ、周りには排水枠もつけられていました。
その上に左右それぞれにシンボルとなる樹木、イロハモミジとドウダンツヅジが、バランス良く配置されました。周りには、水をたっぷりと含ませた「アクアソイル」が傾斜状に盛られていきます。ザクザクとスコップで掬い上げられた「アクアソイル」は白くて雪を盛り固めているような楽しい光景。出来上がりのイメージはすでに二人の中で共有されているようで、手際良く形作られていきました。
その後、何種類もの植物が植えられていきました。山野草、園芸品種など高低差のバランスや季節ごとに咲くタイミングなど考慮されて配置されていたのだと後になってわかりました。その上を化粧砂、炭、そして風合いのある岩、苔が丁寧に盛られ、起伏の富んだ風景が出来上がっていきました。自分自身が小さくなって、苔の谷間や岩山を登って言ったら、どんなに気持ちの良い景色が見られるのだろう。。とワクワクしました。
デザイン
このしっとりと落ち着いた、そして新鮮な雰囲気を醸し出している一坪サイズの苔庭をデザインしたのは、フロリガーデナーの瀬沼 泉さん(花思草)。フローリスト×ガーデナーである瀬沼さんは、生花、ガーデニング、などを融合し、ジャンルを超えた今までにない新しいスタイルで、SNSでも積極的にその活動を発信しています。
瀬沼 泉/フロリガーデナー
https://www.hanashigusa123.com
テレビ番組装飾、フラワーショップ、ウェディング装飾会社などの勤務を経て 2016年に独立、2020年 花思草として栃木県栃木市を拠点に活動を本格化。
主な業務にサスティナブルな庭施工や出張花遊びレッスン、街なか緑花など。
サスティナブルな環境つくりプロジェクトに「大地の再生」、「子どもが自ら育つ園庭整備」などに参加中。
街の風景のひとつに
3月に完成した上町まるものがたりの一坪苔庭は、それからさまざまな植物が花を咲かせ、季節ごとに違った景色を魅せてくれます。世代を問わず通りゆく人が足を止め「通るたびに楽しみにしているのよ。」「うちのベランダもこんな感じだったら素敵だわ」と自然と会話が生まれています。また、木片の名札がそれぞれの植物についたことで、人々の探究心も深まり、まさに「歩みのあるところ」に会話を通して人の心が豊かになっていることを実感しています。
これからまた巡る季節に、どんな植物が顔をのぞかせてくれるのかとても楽しみです。この苔庭を地域の人々と一緒に見守り、変化を受け入れ会話から生まれる物語を楽しんでいこうと思います。
上町まるものがたり
上町まるものがたり一坪苔庭の植栽
<樹木> ドウダンツツジ、イロハモミジ、ヒサカキ、ヒュウガミズキ、ツリバナ、コバノズイナ、ヒメウツギ
<山野草> キチジョウソウ、イカリソウ、カタクリ、イチリンソウ、ヤマシャクヤク、タンチョウソウ、ホウチャクソウ、オダマキ、ホタルブクロ、キキョウ、ユキワリソウ、クロバスミレ、バイカ オウレン、スイセン
<園芸品種> リシマキア ミッドナイトサン、アッツザクラ、ティアレア コンディフォリア、ラミウム
<グラス類> ハクリュウ、タ マリュウ、ノシラン
<シダ類> オニヤブソテツ、ベニシダ
<苔類> マンネンオキナグサ、ハイゴケ